機関紙「ジャーナリスト」09年8月号から転載します。
放送を語る会
台湾近代史を学ぶ
Nスペ「アジアの“一等国”」を題材に
一部の保守派が抗議運動を展開しているNHKスペシャル「アジアの“一等国」”を視聴し、台湾の近代史を考える放送フォーラム(主催=放送を語る会)が、7月24日に渋谷区勤労福祉会館で開かれた。番組を見た後、春山明哲早稲田大学特任教授が講演し、あまり知らない台湾近代史と台湾史の研究について解説した。
台湾統治の研究が少ない理由として春山氏は、日本が敗戦により一挙に植民地を失い、植民地独立戦争が続いたフランスやイギリスのような向き合い方ができないこと、台湾からの引揚者が生活再建に追われ統治時代を語る暇がなく、歴史学会は本土(中華人民共和国)に関心が集中し、台湾が視野から消えていたことなどをあげた。
番組への感想として春山氏は、主要産業の砂糖生産や日本側の台湾統治に批判的だった経済学者矢内原忠雄(戦後、東大総長)、また統治下での台湾の抵抗運動について触れていない点が不満だとした。
質疑では番組を批判する側が問題にする「日台戦争」「人間動物園」「漢民族」という後についての見解が質問された。春山氏は「日台戦争」という言葉は学会で定着はしていないが、規模の大きさからそう表現した著作(檜山幸夫・『日清戦争 秘蔵写真が明かす真実』等)があり、今後の研究課題という。
「人間動物園」という言葉が出てくる日英博覧会については、当時は余興としてヨーロッパで普通に行われ、日本政府も台湾を野蛮だとする意図で展示していたわけではないと指摘した。
「漢民族」については一つの文化概念とした。
春山氏はまた、文字で書かれたものと映像表現との違いも根底にあるとして、最近の台湾映画『海角七号』を例に引いた。