機関紙「ジャーナリスト」09年9月号「スポーツコラム」を転載します。
画期的な「競技者の」権利保障
高校、大学野球を統括する日本学生野球協会が「日本学生野球憲章」の改正第一次案を発表して論議を呼びかけた。
プロ野球西武のドラフトにからむ裏金から高校特待生問題が明るみに出て、学校野球再生のため、その憲法的な「憲章」の全面的見直しに動いていた。
改正案は前文で、学生は「教育を受ける権利」を持ち、学校は「権利を実現する責務を負う」を前提に「学生野球は教育の一環でありアマチュアリズムをその基底的要素とする」と宣言して、日本国憲法が保障する「教育を受ける権利」を学校スポーツの基本にすえた。
競技者の権利の問題としてスポーツをとらえた点では他競技には見られない画期的な意味を持つ。
学生野球の基本原理として、第一に「平和で民主的な人類社会の形成者として必要な資質を備えた人間の育成を目的とする」とうたい、フェアプレーの精神、政治的商業的利用の拒絶、一切の暴力の排除、差別の禁止などをあげた。
初めて部活動のあり方にも踏み込んで、「週休1日の原則」を提示しながら、高校、大学の基準設定を求めた。
見直しの引き金となったプロ球団との契約にからむ裏金やヤミ交渉などを厳禁する一方でプロとの交流は緩和し、特待生に関しては奨学金や高野連などの基準に基づく費用免除を認め、学校に「定められた教育課程を履修することを保障する」義務を負わせた。
部活動と学業の両立を強調して野球部改革へ大きく一歩踏み出す決意を示し、部員の権利保障に重点を置いたのが特徴だ。
指導者を含めた一切の報酬禁止や学校の義務などに、現実重視の異論も出そうだが、競技団体自らが理想堅持に動き出した意義は大きい。プロ野球界がどう受け止めるか注目される。
他競技でも学校スポーツのあり方には問題山積だけに、日本体育協会や日本オリンピック委員会などにも大きな課題を提示したと言えそうだ。