機関紙「ジャーナリスト」07年10月号から、「情報通信法」勉強会の記事です。
「基幹放送を守れ」 情報寡占に市民参加で対抗
『情報通信法』勉強会で桂敬一氏
9月28日、JCJ事務所で「情報通信法」(仮称)の勉強会が開かれた。
6月に研究会の中間取りまとめが発表された同法の理解は難しい。JCJミニシンポの枠で桂敬一立正大学講師の話を聞いた。桂氏はメディア総研の発表したパブリックコメントの作成にも関わっている。
桂氏は最初に「レイヤー」という聞き慣れない単語を説明なく使う審議会の姿勢を批判した。
レイヤーとは層のことで、情報通信産業の領域を横断的に捉える考え方だ。有線や無線の通信設備など情報の径路(伝送インフラ)、情報の入り口機能や認証、課金などを担う事業(プラットフォーム)、情報の内容(コンテンツ)の3層に分けられる。
関連
メディア総研のパブリック・コメント
従来は電気通信法、放送法など通信、放送の分野ごとに作られてきた体系を、新法では通信・情報法法という名で通信、放送を同列に一括りにしようというものだ。
しかし通信は秘密順守、放送は自由と独立という別個の原理がある。放送法は言論の自由を第1条で定めている。
従来の法律が直ちに廃棄されるわけではないが情報通信法が出来れば、これまでの「放送」の観念は失われ、その公共性の担保は危うい。
またホームページやブログなどの市民の情報発信は「公然通信」として、規制の方向が打ち出されている。公共の利益からみて何を規制するか。その判断は行政権力がすることになる。
桂氏はまた、伝送インフラ、プラットフォーム、コンテンツは互いに重なり合う部分があると指摘した。3者の重なり合う部分を巨大メディア産業が押さえれば情報寡占になる。
放送内容の適否を国が判断するのは憲法違反だから、放送局の免許は施設に与えられる。衛星デジタル放送が実現して以降、施設免許の建前が実情に合わなくなった現実があるが、桂氏はそれなら新しく放送を再定義して「基幹放送」を守るべきだとする。その時に市民が参加・運営できる放送局を積極的に作るべきで、それは放送・通信の境界をなくし市場競争優先の考え方に貫かれる情報通信法では望めない。桂氏はこの法への対抗運動は、市民が放送局を作れるような、市民のコミュニケートする権利を強調したものであるべきだと提起した。
まだ出版や新聞は、この法律を放送や情報・通信産業の問題と捉えている。しかし書籍、コミック、新聞を買わず、テレビもニュースも携帯で間に合わせる若者層が増加している。放送、通信の融合とその法制度の行方は既存メディア全体の問題でもある。