「ジャーナリスト」09年1月号から転載します。
フリーランスの知られざる苦境
泣き寝入りせず出版ネッツへ
出版界 横行する不払い
北健一(出版ネッツ書記次長)
「年越し派遣村」をはじめ貧困、労働問題の報道が近年活発になっている。それはもちろんいいことだが、メディア産業内部の「労働問題」は意外と知られていない。
出版界で働くフリーランスの編集者、校正者、ライターなどの組合=出版ネッツには、トラブルに遭った仲間からの相談が寄せられる。この3年、増加の一途だ。
デザイナーのAさんは、業界紙の依頼で広告を制作したがまったく代金を払ってもらえず、しばらくしたら会社がどこかに移転。社長の携帯に電話したら、「俺は数日前に辞めた」と言われた。
ライターのBさんは、3ヵ月かけ海外取材までして執筆・編集した大手出版社発行のムックのギャラが、経費を引くと手取り10万円にしかならなかった。
出版ネッツに寄せられる相談はこのように、請負代金の不払い、不当な減額、やり直しなどが多い。相次ぐ雑誌休刊にともない、編集部に出勤して編集実務を担う「常駐フリー」の契約打ち切りもある。数十万円の不払いでも、フリーにとっては深刻だ。
出版ネッツでは多くの場合、団体交渉を求める。団体交渉権は憲法で直接保障された働く者の権利で、フリーランスの問題解決にも実効性が高い。
Aさんのケースでは登記簿から移転先を突き止めた上、社長を呼んで交渉、分割で全額回収した。
Bさんのケースでは、4回の団交で下請代金支払遅延防止法を活用し、解決金支払いに加え、「今後ギャラなどを事前に明示するよう努める」旨の合意書を交わした。
発注元大企業の横暴から中小の下請け企業(個人事業主も含む)を守るルールである下請法は、発注書交付、60日以内の代金支払い、不当な買い叩きの禁止などを定めている。穴もあるが、労働法が使えない場合にはそれなりに役立つ。
それにしても最近の不払いの急増は異常だ。最大の原因は発注元の出版社、編集プロダクションの経営難にある。出版不況が続けば、不払いもさらに増えかねない。
雑誌も買えないワーキングプアや、本を読む暇もない長時間過密労働をなくしていくこと、そして出版物の魅力を高めていくことで「出版界を元気にする」ことが、一番の鍵だと痛感している。
★出版労連・労働相談受付電話 03(3816)2911、専用メール soudan@syuppan.net
秘密厳守・相談無料。なお相談は出版労連での面談が原則です。