機関紙「ジャーナリスト」 10年1月号から「スポーツコラム」を転載します。
バンクーバー五輪 競技環境を知る好機
大野晃
バンクーバー五輪の開幕が目前に迫った。スポーツ・マスメディアでは日本代表のメダル獲得皮算用がかまびすしい。
しかし厳しい現実を覚悟しなければなるまい。長野五輪から12年、日本の冬季競技の環境は劣悪化の一途だったからだ。企業スポーツ部の休廃部や公共的なトレーニング施設の閉鎖などが相次ぎ、競技者たちは所属チームや練習場所の移転を余儀なくされ、海外遠征の費用捻出に苦労が絶えなかった。おかげで長野五輪の金5、銀1、銅4から米国・ソルトレークシティー五輪の銀1、銅1、そしてイタリア・トリノ五輪の金1へ成績は急降下した。しかし国や日本オリンピック委員会の対策は皆無に近かった。
苦難の中で、スピードスケートの岡崎選手やスキージャンプの葛西、岡部両選手、モーグルの里谷選手らは連続出場を果たすが、スピードスケートのヒ―ロ―清水選手は代表落選で引退した。
体力、技術の維持がむずかしいのは事実だが、環境の激変が競技者たちを追いつめてきた。
日本ほどではないにせよ、世界の冬季競技王国と言われてきた国々でも世界的な不況下と温暖化の影響で競技生活の様変わりが予想される。
開催国・カナダもその一つで、赤字運営が懸念されるとともに、温暖化による競技の将来を危ぶむ声もある。だからこそ冬季競技の現代的なあり様を模索する画期的な五輪になるだろう。世界各国の冬季競技の環境を知り、日本の将来を考える絶好の機会である。
雪と氷に親しむ冬季競技は自然に抱かれてスポーツを楽しむ人間的な魅力を持つが、そのために人類は自然を切り開いてきた。そこにどう折り合いをつけていけば良いのか。差し迫った問題として突きつけられている。ヒントだけでも、この五輪から見出したいと思う愛好者は多いだろう。
日本代表の結果に空騒ぎすることを抑えて、競技と競技者たちの未来を問いかけるメディアでなければなるまい。(スポーツジャーナリスト)