2月12日に開かれた出版支部例会「出版界の地殻変動を読み解く」シリーズの第3回目は、「変貌する書籍出版」をテーマに書店の現場からの報告。
書店に来る顧客ばかりでなく来店しない消費者に本の作り手の情報をどう届けるか、との問題意識で取り組んでいるのは紀伊国屋書店新宿本店の大藪宏一氏。紀伊国屋では「ほぼ日刊イトイ新聞」(糸井重里氏のサイト)と提携して、吉本隆明の講演DVDなどの商品を売るなど他媒体との協同を仕掛けている。またツウィッターも始め、すぐに売り上げ増とはならなくても、顧客との接点を増やす試みを続けている。
大藪氏の実感では、リーマンショック以来、顧客が本を買わなくなったそうだ。
またネット書店での売れ行きはリアルの書店の売れ行き増にはつながらないという。
この例会の会場の会議室がある東京堂神田本店の店長の佐野衛氏は、出版社が売れる本を目指して安易な本づくりをし、著者の才能をつぶしているのではと指摘する。
佐野氏によれば、研究成果を世に問うような本が減り、解説したような本が増えた。佐野氏は学会で話題となるような本には必ず読者がつくといい、例として『天使はなぜ堕落するのか』をあげた。
佐野氏は書籍流通の最大の問題は返品だとし、出版界が「一度出た本を大事にできなくなった」現状を指摘した。
佐野氏は書棚への本の並べ方や平台への置き方など書店の現場の知恵の一端を披露しながら、本を愛好する人口はそれほど減っていないと強調した。
会場からは出版社の営業への意見などの質問が出された。参加人数は 50人。 (機関紙部)