機関紙「ジャーナリスト」2011年11月号から「映画の鏡」を転載します。
甘い想定次々に露呈
九電と市民の原発安全討論描く
『脱原発 いのちの闘争』
沖縄・辺野古の米軍基地問題や、岩国の米軍基地再編反対闘争を描いた三部作などで知られる記録映画監督西山正啓氏の、「原発震災を問う人々」シリーズの第一弾『脱原発 いのちの闘争』が完成し、各地で自主上映などが.始まっている。
この第一弾は、九州電力川内原発沿岸の海に異変が起きていると、海亀保護監視員の中野行男さんが訴えるところから始まる。中野さんによると、川内海岸での海亀の産卵と孵化が減り続け、鮫の死体がおびただしく打ち上げられ、エイ、イルカ、鯨などの死体までもが漂着するようになったという。砂浜の温度より、排水口近くの海水温が高いことが関係しているらしい。
中盤から映画は、脱原発ネットワーク・九州など、九州の原発反対団体が団結し、こうした沿岸の異変を指摘しながら、川内、玄海などの九電原発の安全性について、九電側と討論するシーンが描かれるが、討論では、九電の想定の粗さが、次々と暴露されて行く。
そして終盤は、九電の「やらせメール」に絡んで混迷を深める佐賀県庁への抗議行動が記録され、飛び入りで抗議に加わった俳優山本太郎さんの熱弁が紹介されている。山本さんは所属事務所を辞め、子供の命を守る脱原発運動に挺身しており、熱弁に説得力がこもる。
また、この抗議行動は、福島から佐賀に避難してきた原発難民の主婦の、「私は福島に帰りたくとも帰れない。佐賀県も、県民の故郷を奪うのか」という鮮烈な発言で締めくくられる。
福島原発事故の唯一の救いは脱原発運動が息を吹き返したことで、その一環としての映画シリーズに今後も期待したい。(上映予定はhttp://nishiyamamovie.blog39fc2.com/) 木寺清美