機関紙「ジャーナリスト」12年3月号から月間マスコミ評・出版から転載します。
勇気は伝染するとの信念でこそ
『世界』3月号の特集「何のための『一体改革』か――税と社会保障を考える」を読んで違和感を覚えた読者もいるのではないか。あの岩波書店の雑誌さえも、消費税の増税に賛成する論者をズラリと並べたことについて。
週刊誌は違う。『週刊朝日』も『サンデー毎日』も消費税増税に疑問を投げかける特集を組み、増税反対論者を登場させた。両誌とも、母体の新聞社社説とは一線を画した編集をしたことは、健全とさえいえる。『週刊ポスト』が財務省による増税世論の誘導を暴く記事を載せたのも記憶に新しい。
消費税増税をめぐる世論は真っ二つに割れ、むしろ反対が多い。反対論を紹介しないことには、「一体改革」の議論の前提にすらならないだろう。
その一方で、『世界』には一読を推奨したい論文もあった。ウィキリークスや米兵による内部告発、ウォールストリート占拠運動の意義を、数多の例を引いて豊かに論じた宮前ゆかり氏の「〝勇気は伝染する〟」である。
「勇気は伝染する」とは、アメリカ政府の侵略戦争責任を告発する秘密情報を暴露したウィキリークスの創始者・編集長ジュリアン・アサンジ氏のモットーである。宮前氏は、そのアサンジ氏の身柄がロンドンから、「保釈のシステムがない」というスウェーデンを通じて秘密裏にアメリカ政府の手に渡れば、死刑の可能性に直面していることに警鐘を鳴らす。
宮前氏は、アメリカやドイツの企業が、中国政府やイラン政府にインターネット監視技術を提供したこと、アメリカでは2012年現在、たった6社が90%のメディア(テレビ、ラジオ、新聞、映画)を支配している事実を紹介している。
アメリカ政府がネット情報規制法案の成立を求め、同様の法案を他国政府に強いる圧力をかけてきたこともウィキリークスの暴露した公電でも明らかとなっている。宮前氏が指摘していることではないが、アメリカ政府の動向は、日本政府が秘密保全法案や共謀罪などの成立を急ぐ背景の一つともなっているのである。
さらに宮前氏は、昨年12月31日の「国防権限法」の成立によってアメリカは、「政府の方針に叛意を示す米国市民を『テロリスト』とし逮捕し、民事法廷ではなく軍事法廷を介して永久的に勾留する権限を軍隊に与える」という「恒久的勾留条項」を持つ国となったことを紹介している。こういう好論文を掲載する『世界』こそ読みたいものである。
荒屋敷 宏