「ジャーナリスト」6月号から書評です。「ジャーナリスト」には毎月3本の署名いり書評と、2本の紹介(無署名)がの載っています。
団塊諸君! 一人旅はいいぞ! 森 哲史 (朝日新聞社 1500円)
記者諸君。自分の目でみるんだ!
極貧旅行の苛酷体験と醍醐味
江草晋二
サラリーマンにとって「仕事」と「旅」は対極にある。仕事が出来る奴は旅なんかに行く暇はない、旅なんかに金を使わない。少なくとも、上司はそう思っているんじゃないか、と思っている。
その因習を団塊の世代のせいにするつもりはない。ただ、熾烈な世代内競争に勝ち残る術として、その空気の醸成に加担してきたことは、彼らの背中を見ながらサラリーマン時代を過ごしたボクには確信できる。
著者は1943年生まれの元新聞記者。妻からプレゼントされた退職金の一部150万円を資金に世界一周の旅に出る。
当然極貧旅行である。バックパックを背負い、安宿の相部屋に泊まる。なるべく陸路を使い、切符やビザは現地で調達。
もとより一人旅は心細い。まして還暦を過ぎての初体験。苛酷である。だが、それ以上に自由でおおらかな気分が伝わってくる。ハプニングを楽しみ、トラブルを期待している感さえある。韓国から中国、東南アジアを巡り、インド亜大陸を経てイスラム諸国に至る。
著者は苦労の末イラク入国を果たす。そこで彼は衝撃的な場面に遭遇。朝のラッシュ時に英兵によって通行止めされた道路を、タンクローリーが次々と横切る。それを護衛していたのが「人道支援」中の自衛隊だったのだ。しかも彼らは車上で銃を構えていた。
著者はタイトルで団塊世代に呼びかけている。自身遅過ぎた体験への後悔も込めて。だがそれは、同時に後輩たちへの自責を込めた呼びかけでもあるのだ。「記者諸君。自分の目で見るんだ!」。