機関紙「ジャーナリスト」07年12月号から
第5回JCJミニシンポ
安易なドラマに流される犯罪報道
大石教授に聞く“ジャーナリズムとプライバシー”
第5回目をむかえたJCJミニシンポ(隔月開催)は、11月27日にJCJ事務所で大石泰彦青山学院大学教授の話を聞いた。テーマは「ジャーナリズムとプライバシー」。
講談社刊のノンフィクション『ぼくはパパを殺すことに決めた』が、少年事件関係者の供述調書を記載し、情報源として鑑定医が逮捕されたケースについて大石氏は犯罪報道のあり方やプライバシー概念の変遷など、基本的なところから解説した。
大石氏はノンフィクションの著者の草薙厚子氏の姿勢をジャーナリストではないと厳しく批判した。大石氏はジャーナリストの仕事上、必ずしも法令順守すべきとはいえないとしながらも、調書を直接に引用した作品を犯罪の深層に迫るものではなく、取材源が秘匿されえないことは明らかという。そしてジャーナリストは倫理と職能をもった専門職であり誰でもできるものではないと強調した。
大石氏の話の基底には市民のメディア不信への懸念があるようで、このケースについてのマスメディアの報道が、「逮捕は遺憾」など旧来の言論・報道の自由をたてにしたステレオタイプの反応であることも批判、日本の主要マスコミでは犯罪報道が突出している現状を改めるべきだという。
大石氏は犯罪報道の意味を、社会の歪みの顕在化である犯罪の情報の共有し、警察・検察権力の行使を監視することとしてあげた。しかし現状は安易な人間ドラマに流されているとする。偶発性の高い殺人に比べ、自殺のほうが背景に社会矛盾があるとしても、メディアは自殺問題の背景などは殆ど報じない。そこには過労自殺を生む産業界への配慮があるのではないかと多いし氏は批判する。
被害者の人権を行政が保護する欺瞞性も指摘された。
大石氏は日本ではプライバシーが専ら自己情報コントロール権として考えられ、それが権力に悪用される危険性を指摘し、前世紀末にプライバシー概念の生まれたアメリカでは、現在は人間の尊厳を侵されない権利として考えられていることを説明した。