2007年11月号から『崩壊する新聞 新聞狂時代の終わり」(黒藪哲哉著)の書評を掲載します。
新聞販売の問題をJCJ機関紙は継続して取り上げています。
古いビジネスモデル崩壊は不可避―「再生」への道への問題提起
(北健一、ジャーナリスト)
2007年6月、福岡高裁で歴史的な判決が言い渡された。新聞販売店に対する優越的地位を濫用した読売新聞社による「押し紙」と改廃(販売店契約の更新拒絶)を司法が断罪したのである(読売の上告取り下げにより判決が確定)。
新聞販売をめぐる〝夜明けの始まり〟ともいうべき判決は、いかにしてかちとられたのか。本書は、新聞販売問題を追い続けてきたジャーナリストによる渾身のルポルタージュである。
公取委に特殊指定を維持させるための政権与党との密着、巧みに隠された「押し紙」を暴く努力、折り込みチラシの詐欺的水増し……。著者の黒藪は、これらの事実を現場を歩いて明るみに出していく。深く鋭い取材の成果に拍手を贈りたい。
販売局に所属する担当員の「空領収証」や、改廃を狙われた販売店の配達員に対する執拗な尾行、押し紙と引き換えに出される補助金の出所など、スクープも少なくない。
朝日が発行する英字紙・ヘラルド朝日での「偽装請負」問題(朝日は通常の請負と主張)もそうなのだが、日頃紙面で追及している不正と似たようなことをしながら「言葉のチカラ」と言われても、どこかむなしい。
販売や人事と紙面編集を切り離す発想は、経営側だけでなく新聞社の組合にもあるが、だからこそ、販売の歪みを「ジャーナリズムのあり方」として考えようという著者の問題提起は刺激的だ。
もちろん、編集は、販売や人事から相対的に独立しているべきだが、自らの不正に頬かむりしながら他者ばかり追及することのウソっぽさは読者に見抜かれている。
古いビジネスモデルの崩壊はもはや不可避だが、その先の「再生」は、苦い真実と向き合うことから始まるに違いない。
(花伝社、1700円)