JCJ機関紙「ジャーナリスト」7月号から。
鋭い洞察、温かい人柄
近田洋一さんをしのぶ会
「いつも弱い立場に立ってくれた」―。「しのぶ会」の会場に飾られたスペイン・マラガで満面の笑みを浮かべる近田洋一氏の写真に向かって、同僚や同志、取材を受けた人たちが熱い思いを述べた。記者であり芸術家だった近田氏の交友関係の広さに誰もが驚いた。(1面参照)
マイクリレーの話の中で共通していたのは、近田氏の鋭い洞察力と「おかしいものはおかしい」とする揺るぎない報道姿勢。そして誰もが「いつも温かかった」と話し、家族のように感じていたことを口にした。会場には、一度取材を受けただけの人も来ていた。
近田氏は、デスクとして記者と粘り強くやりとりを繰り返し、後輩が育つのを楽しみにしていた。会場には、沖縄・辺野古を題材にした力強い絵を始めとする近田氏の作品も飾られた。「ありがとう」という言葉と、それぞれの立場で近田氏の仕事を受け継いでいこうという声があふれた。
三線の演奏あり、オカリナあり、そして会場全体での大合唱……。近田氏から広がった多ジャンルの人たちが一つになった。しのぶ会は「終わり」ではなく、新たな「始まり」の会となった。
片山夏子(東京新聞記者)