「揺らぐ安全神話 柏崎刈羽原発/中越沖地震からの渓谷」でJCJ賞を受賞した新潟日報取材班の三島亮さんのスピーチです。
「安全」感覚のズレ痛感
角栄氏の関与は未解明
取材でお会いした作家・高村薫さんの言葉が印象に残る。「震災は不条理だ。万一、震災で原発が放射能漏れを起こしたら、想像を絶する」
「これほど激しい揺れに襲われた場所になぜ、原発は建ったのか」という疑問が取材の出発点になった。
取材を通して東京電力、原発メーカーの技術者や国が言う「安全」と、住民側が求める「安全・安心」との間にあるズレが余りにも大きいことに愕然とした。この深い溝を埋めない限り、「地震と原発」問題の解決の糸口が見えないのではないか。
立地の経緯を過去に遡って調べていくと、首都圏への人口集中・経済繁栄と地方の人口流出・経済的疲弊という構造や、それに対応する国策という現実が見えてきた。急増する電力需要に対応するため、新たな供給基地を探す東電と、地域振興を模索していた地元とで、原発建設は利害の一致するものだった。
柏崎刈羽原発は故・田中角栄元首相の地元。元首相は原発の誘致に関わっていたのか? 当時の資料や関係者に当たったが、「直接的関与」を示す証拠はつかめなかった。
ある月刊誌が「原発建設予定地の売却益約4億円が田中邸に運ばれた」と報じたことがあったが、運んだとされた地元筆頭秘書は一切認めてこなかった。
そんな中で、取材班の記者が何度も元秘書のもとに通い詰め、「間違いありません」との証言を引き出した。原発絡みの4億円が36年前に東京・目白の田中邸に運ばれていたという事実を掘り起こすことができた。
しかし、積み残した課題は多く、さらに取材を続けたい。
(阿部 裕)