『ジャーナリスト』08年8月号から。
黒田清JCJ新人賞を受賞した城戸久枝さんのスピーチです。
戦争語り継ぐ使命
歴史と重なり合う家族史 私の家族の歴史を書いた本です。両親が都合でこの場に来れず残念です。
父は1970年に28歳で帰国、その後に結婚して私が生まれました。 父が中国残留孤児だったことは知っていましたが、何だか受け入れられませんでした。
学生時代、あるきっかけで日中の歴史や残留孤児のことを何も知らない自分が恥ずかしくなって、「書かなければならない」と思い立ちました。父は最初、とりあってはくれませんでしたが、私は中国に留学しました。
父、祖父、中国の祖母・・・小さな家族の歴史が両国の歴史、戦争という大きな枠の中にあることがわかりました。大きな歴史は小さな家族の歴史が重なり合ってできていることを実感しました。
父が幼少時を過ごした中国の村に行ったとき、ここが今の私につながっているのだという、自分のアイデンティティのようなものを感じました。
この本を出してから、「あの戦争をどう語り継ぐか」という問いを受けることが多くなりました。語る側が老いて少なくなっている以上、若い世代がどう語り継ぐかが何よりも大事です。私の体験が何かヒントになればと思っています。
中国とどう向き合うかも私の大きな課題でした。2004年サッカーアジア杯決勝「日本・中国」戦のとき、私はちょうど北京にいました。競技場周辺はものすごい雰囲気でしたが、私自身はなにもない“普通の北京”の中にいることにギャップを感じました。
反日感情は激しいものがあり、どう対応するかは悩みでしたが、一方で中国の人々との豊かな交流がありました。国と国を背負うのではなく、まず個人と個人として話をしていくことが大事だと思います。
父は当初、出版には反対でしたが、出てからは「よく書けている」と喜んでくれました。
これで私の歴史をたどる旅は終わったかもしれません。でも読者の方からは「こんどは私の話を聞いて」という声が寄せられています。
そんな人たちの声を吸い上げることが、若い世代の一人として、私の次の作品につながっていくと思っています。
(小寺松雄)